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「炎の蜃気楼」非公式個人ブログです 管理人の主観にあふれた女性向け小説です

八咫烏 ~yatagarasu~



電話の向こう、25

今日、2回目のミラステ見て参りました。
すごい!初日よりも進化している〜
演出も、ところどころ変化ではなく進化です。DVD撮影のためだけではなく、しっかり原作を大切に舞台を作っているということを感じる変化、いや進化です。
初日は、前から10列目右サイドからの観劇でした。近いので役者さんの表情とかも観られました。今日は、後方真ん中左寄り、なので全体を観ることができました。実は、千秋楽は前方真ん中辺りです。3回とも、いろいろな場所角度で観られるので、それはそれで楽しみです。
そして、今日のMVPは、何と言ってもひらまき直江。確実に、橘直江に繋がっていくのを感じる演技は素晴らしい。直江だ、直江だと観ておりました。
それと、カーテンコールの、ひと言トークでは、長秀だったのですが、いいキャラしてますね。DVDを買う方に向け、特典映像ありですね。笑笑。富ショーさんとも、いいかけ合いでした。
私的には、昭和編舞台、4年続けて、何回か観てきましたが、すべてを通して、一番感激したミラステとなりました。



電話の向こう、25

「高耶君、よく頑張ってくれたよね」
「いえ、オレは何も・・・」
直江が目が覚めて、お兄さんが来た。
お兄さんが帰る時、病院の入り口まで見送って、一緒に歩いてきた。そしたら、お兄さんが真剣な顔でそんなことを言う。
「あの子はなぁ~、少し変わりもんだが、君のおかげでずいぶん変わったよ。あっ、変わりもんが変わったという表現はおかしいな」
お兄さんは、そう言って笑った。
「でも・・・」
「でも?なんだい?」
お兄さんは、優しそうに微笑んだ。まるで、オレの言わんとすることをわかっているみたいだ。
「オレ・・・高校生だし・・・」
「そうだね、まだ高校生だ。でも、歳はとるものだよ。減りはしないから待てばいい。今の君の年齢では、弟が手を出せば、青少年保護育成条例で、捕まりかねないね、ハハハ」
そんな事を小声で言うと、悪戯っぽく笑う。
「そんな・・・」
「それから、何だろう?」
「男だし・・・」
「そうだね、君は男だ。とても男らしいね。そして、弟も男だね。間違いない」
「だから・・・」
「君を男らしいと言ったばかりだけど、歯切れが悪いね。そんな事を気にしていたのかい?」
「えっ、自分だって驚いているんです。ご家族の方ならなおさら・・・」
「そうだね。驚いているよ。高校生なのも、男の子だってことも、うん、確かに、驚いている。でも、変な話なんだが、何せ変わった子だと言っただろ?うちの弟。そんな変わった弟だから、一番驚いているのは、本気で人を好きになったことなんだよ」
「えっ?」
「いやぁ、自分の弟なんだが、ホントに変わっていてね。女性にはモテてるらしいんだが、まったく本気になったことがない。恋愛だけじゃないんだ。すべてなんだよ。仕事も、勉強も、運動も、何もかも、普通の人より恵まれていると思うのに、本気になることがない。寺生まれのせいかね、煩悩がないような、そんな無気力な奴だったんだ。冷めていると言うか、これが困りもんでね・・・」
お兄さんは、抽象的に話しているが、直江本人からも似たような話を聞いていたので、なんとなく理解できる。
「義明さん本人も、同じようなことを言ってました」
お兄さんは、驚いた顔でオレを見た。
「そうか・・・やっぱりな。弟は本気なんだ。初めて本気になったんだ。だから、君の誤解を何としても解きたかった。だから、ここまで来た。あんなに疲れていたんだ。休みなく働いて、実家の手伝いまでして・・・それが、私達の答えだよ。高耶君」
「お兄さん・・・」
「そう言えば、君は弟のこと、直江って呼んでいたね」
「はい。そう呼んでくれって・・・」
「そうか、それも答えだ。」
「えっ?オレにもわからないのですが」
「そうだろう。そのうち弟の口から聞いてくれ」
お兄さんは、オレの肩を2、3回叩くと手を上げて、駐車場へ行ってしまった。オレは、その後ろ姿にいろいろな意味を込めて、深々とお辞儀した。
直江・・・
本名と違う名前で、呼んでくれと言ったのは、見晴らし台の上だ。
松本城を見ながら不意に言った。
オレの家庭の事情を話したから、代わりに自分の秘密をカミングアウトするつもりだったのか・・・
4人兄弟の4番目、その上三男坊。物心ついてすぐ、しばらく養子に出されたそうだ。その相手が直江家だった。
直江家では、とても可愛がってもらった。そして、唯一、子どもらしい日々を送っていたと・・・しかし、3年後、直江家に実子が生まれ、状況が変わった。あっさり実家に戻された・・・こんな短期間に目まぐるしく環境が変われば、子どもだったら変化についていけるわけはない。しかも、すでに自我が芽生えている年齢だったのだ。いろいろな矛盾を理解できなかった。
その頃の直江ができたことは、自分の殻に閉じこもることだった・・・
そのために、少し"変わった"子どもになったのだと・・・
お兄さんは、そのことを知っているのかと言う意味で言ったのだろう。
橘家にしてみれば、大変なことだったのだろう。養子に出すというだけでも、いろいろ言われかねない。それが、程なく戻されたという事実は、養子に出した以上に打撃は大きいはずだ。ましてや、古刹の寺なら・・・世間的にも、親の心境としても・・・
橘家の苦悩や、憂鬱が、直江の名前に込められている。そんな気がした。そんな名前をオレに呼んでくれと言った、あいつの心境がわかるようで理解しきれていない。あいつの中の闇が、直江の名前を呼ばせているのだろう。
直江・・・
そう呼ばれる時、おまえは何を思い、どう感じていたのだろう・・・





  1. 電話の向こう
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プロフィール

kihiro0501

Author:kihiro0501
kihiroと申します。
「炎の蜃気楼(ミラージュ)」の非公式二次小説です。
ミラに感謝と愛を込めて、日々脳内妄想爆走させております。
私の設定は、ほとんど、ハッピーエンドが基本です。ご了解とお詫びを先に申しておきます。
今頃のミラですが、よろしくお願いいたします!

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